Column

  1. Column一覧

木村博昭の住宅定番ディテール 彰国社ディテール0601より2006.01

 スチールシートの利点と考え方
 
 建築にスチールシートを使い始めて12年に成る。これまで、住宅及び小建築と既に10軒あまりのスチールシートの建築が完成している。やはり最大の利点は、外装仕上げ材と構造材が一体とて考えられ、建築の骨格となる鉄骨本体と共に空間を包む外装材が鉄工所の工場で同時に制作できる点にある。現代のコンピュータ力が最も発揮できる、設計側と制作、加工側が直接的に連帯し、CAD図によるmm単位の正確な躯体の工場制作が可能であることである。そして、鉄工所のグレードに関係するが、何処でもある程度の品質と精度が確保出来る事、重量で表記され、ほぼ価格も変わらない。一種のオーダーメイドでありながえら、プロダクト的なプレハブ化に対応出来ることである。
 私が使うスチールシートの基本的な考え方は、材料の特製、強度から乗り物のような工場制作に対応したプロダクト的なモノコック建築であり、今のところ、コールテン鋼のような錆の美しさや、彫刻のような素材感が持つ鉄を鉄としての強いインパクトの表現は魅力的であるが出来だけ避けている。現代の加工技術からすれば、スチールシートは自由偏在である、しかし、コスト、一般性の側面からも三次曲線や高度な技術が必要な特殊制作は避け、町場の鉄工所での、工夫と極普通の加工可能範囲内で制作を行っている。
 現在は、徐々に経験を通しながら、鉄船舶の居住部と同様なリブ造による、柱梁に頼らない方法で建設を試みている。より乗り物のような軽快な工業製品的な滑らかな仕上がりになり、内部空間のディテールも、薄壁の空間に突起部分のない平滑なスッキリとした包み込むような納まりとしている。
 問題は、鉄工所で制作されもののサイズが輸送手段で決定され、ジョイント箇所とその方法が、制作に決定的に左右する事にある。また、鉄材の弱点である、断熱と劣化の問題も技術力の進歩で随分と克服出来ている。まだまだ応用と開発の可能性を秘めた材料であり、そして性能と意匠の自由性は他に見あたらないと考えている。